卒論の提出が終わる班も現れ始め、少しずつ研究室が落ち着き、寂しくなってきました。

今日は盛岡班に今年度の研究を紹介してもらいます。


こんにちは 盛岡班です !

わたしたちは、昨年から実習でお世話になっている盛岡市動物公園で環境エンリッチメントを行う研究をしました。

まずは、どんな動物にどんなことができそうか4月に動物園に行きました。

いろいろな動物を見て回りました。

その後、話し合いをしてピューマとカナダカワウソ、そしてピューマの比較対象としてライオンで行うことにしました。

環境エンリッチメントには5つの種類がありますが、飼育員さんや先生の意見をいただき、わたしたちはそのうちの感覚エンリッチメント、さらにその中の嗅覚エンリッチメントを行うことにしました。

嗅覚エンリッチメントは、何か匂いをつけることで嗅覚を刺激し、普段の環境の中に変化をもたらすことができます。

ヒトでいうと、いつも同じ部屋の中にアロマの香りがしたり、お風呂に入浴剤を入れると普段とは違った気分で過ごすことができるのと同じようなことかな?と思います。

先行研究では、糞や餌の匂いで社会的行動や活発な行動が増えたことがわかっていましたが、ここでわたしたちはその行動の変化は群れ生活と単独生活の動物で異なるのか?先行研究では行われていなかった他の動物ではどうなのか?に着目することにしました。

匂いは、普段食べている餌、食べたことのないもので匂いが強く持続するバナナ、未知の同種他個体の糞、野生下でも嗅がないであろうツキノワグマの糞としました。

10/19に1週間馴致させるため、作った容器を飼育さんに手伝っていただきながら、それぞれの放飼場に設置しました。

馴致開始直後、ライオンは容器に興味津々でした。(この次の日、容器を破壊されてしまい、丈夫なものに作り直しました。)

10月27日から5週間の調査が始まりました。

ピューマとライオンの餌です。これを容器に入れて放飼前に設置します。

ピューマは餌のとき容器をかじりまくっていて見ていてヒヤヒヤしました…餌への執着心がすごいです…。

カワウソが何かの匂いを嗅いでいます。

調査終盤は雪が降る日もありました。寒さとの戦いで修行みたいでした。

しかし、雪の中の動物を見るのは新鮮で、どんな環境でも生きる動物は強いなと思いました。

収容後、容器を回収し洗っているところです。これも手が冷たかったです。

1日4時間と1日の中でのほんの一部の行動観察でしたが、この時期の外での観察は正直つらい部分もありました。

が、毎日大好きな動物を見られることや、条件によってどんな反応をするかのわくわくや、来園者の方とお話したりするなど楽しいこともあり、5週間4個体を観察し続けましたが、飽きることはなかったです。

結果は、ライオン(群れ)は餌や果物にはほとんど反応ゼロでしたが、糞の匂いでメスライオンがオスライオンに向かって声をあげながら歩み寄る社会的行動や同居していない別のメスライオンに対する注視が増加しました。

それに比べてピューマ(単独)は、餌や果物の匂いをよく嗅ぎ、糞への反応は薄かったです。

カナダカワウソ(群れ)は、ライオンと同じ反応かと思いきや条件間での大きな違いはありませんでした。

ですが、カワウソには一緒に暮らしている仲間がいないので、複数で飼育していたらライオンに似た効果が得られるかもしれません…!

群れで生活するライオンは、なわばりやグループの中に知らない個体が侵入することを拒み、攻撃するので、嗅いだことのない糞の匂いで、普段いないものが侵入してきたと感じて行動に変化が起きたのかもしれません。

対してピューマは、糞尿の匂いは他の個体のなわばりに侵入して闘争になったりしないようにする役割が強いため、糞の匂いを嗅いでも何かに注視したりすることはなかった可能性があります。

今回の研究結果からは、嗅覚エンリッチメントによる効果の違いは群れか単独の社会性による違いが関係している可能性が示されました。

とてもおもしろい結果だな~と私たちは思います!

このことが、効果的な嗅覚エンリッチメント手法の確立、効果の得られる有効な環境エンリッチメントの確立へと繋げられたら良いなと思います。

最後に、この研究を全力でサポートしてくださった盛岡市動物公園の皆さまや小倉先生、糞を提供してくださった福山市立動物園釧路市動物園の皆さま、寒い時期での調査となり、盛岡まで励ましに来てくれた友だちや先輩、そして研究させてくれた動物たちに感謝いたします!

本当にありがとうございました。

(須原・高橋)