今年も卒論生のみんなに、各自が取り組んでいる研究の内容を紹介してもらうことにしました。
まずはリカオンについて研究している安家さんが原稿を書いてくれたので、掲載します。
こんにちは、動物行動学研究室4年の安家です。
私の卒論のテーマは、「リカオンの個体特有の模様による個体識別に適した身体部位の検証」です。
こんな堅苦しい題名は置いといて、一つずつ崩して説明しますと・・・
まずリカオンってなんだ?というところからですよね。
日本では知名度がとても低いイヌ科の動物です。
アフリカに生息している社会性がとても高い、群れで暮らすイヌ科です。
3色のまだら模様と足が長くスリムな体で、大きな耳を持つのが特徴的ですね。
よくブチハイエナと間違われるのですが、横に並べて見比べてみると全く似ていません…。
(写真のブチハイエナはのいち動物公園で飼育されている個体です。)
このリカオンの黒・茶・白のまだら模様のパターンは、個体によって異なります。
写真を見ていただければわかる通り、黒色の割合が高い個体やほとんど茶色の個体、斑点のようなものがたくさんあるもの、と、様々な色彩パターンがあります。
そんなリカオンは、現在絶滅の危機にさらされています。
それを避けるためには、リカオンがなぜ絶滅しそうなのか、そして、どうしたらその状況から脱却できるかを研究しなければいけません。
その研究には、どの個体が調査中の群れか、その群れ内の個体間の関係性(親子やつがい関係など)などを区別することが必要になっていきます(このことを個体識別といいます)。
今、野生下でリカオンを研究している研究者は目でリカオンの模様を識別して個体を区別しています。
しかし、それではとても労力と時間がかかります。
野生の観察しにくい環境下で、何匹ものリカオンを短期間で覚えることが可能でしょうか。
そう、限界がある!!!!
そこで!!!!
もっと効率の良い個体識別法があるのではないかと、私は考えました。
その方法は、リカオンをカメラで撮影し、ソフトウエアを用いて、静止画に映っているリカオンの個体識別をおこなう方法です。
そのためにソフトウエアを用いて個体識別をおこなえる身体部位を模索することが、今回の私の研究テーマです。
今回使用するのは下記URLのソフトウエアです。
気になる方はぜひサイトに行ってみてください。
このソフトウエアは、個体特有の身体部位の一部を個体ごとにデータとして登録しておけば、登録してある個体のデータが撮影されたときに、同一個体の確率が高いデータを示してくれます。
つまり、「この前登録したこの写真の個体と今ソフトウエアにかけている写真の個体の模様が似ているけど、一緒の個体じゃない~?」とパーセンテージで出してくれます。
このソフトウエアは爬虫類のトカゲや軟骨魚類のエイなどでは個体識別がおこなわれていますが、哺乳類ではおこなわれていません。
リカオンでも実用可能となり、リカオンの研究の効率が上がることで、より多くの生態研究が可能になればなあと願っています。
今回使用するリカオンの静止画は、よこはま動物園ズーラシアの可愛いリカオンたちを撮影させていただきましたものを使用しました。
お忙しい中、私の研究を第一に考えてくださった飼育員の石田さんをはじめとするよこはま動物園ズーラシアの皆様、ありがとうございました。
(安家)