今年度の研究紹介、今回はオオサンショウウオの実験をおこなった佐々木さんが担当してくれました。


こんにちは。 動物行動学研究室4年の佐々木です。

私の卒論テーマは「飼育下のオオサンショウウオにおける餌の嗜好調査」です。堅苦しい書き方をしていますが簡単に言うと、オオサンショウウオはどんな餌が好きなんだろう?ということを調べた研究です。

研究について紹介する前に、この記事をご覧になっている皆さんはオオサンショウウオについてどれくらいご存知でしょうか?私は研究をするまで名前しか知りませんでした。あまり詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか?まずはオオサンショウウオについて簡単に紹介します!オオサンショウウオは、オオサンショウウオ科アンドリアス属に分類される世界最大級の両生類です。大きなものではなんと全長150cm、体重は44kgにもなります!オオサンショウウオは西日本にしか生息しておらず、岐阜県から大分県までの山地や里地を中心とした地域の河川に多く生息しています。また、オオサンショウウオは特別天然記念物に指定されていて、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に分類されています。VUとは絶滅の危険が増大している種、という意味です。

そんなオオサンショウウオですが、まだまだ分かってないことが多い動物なんです。そこで私は、オオサンショウウオの餌の嗜好に着目して研究をしました。分かってないことが多い中でなぜ餌の嗜好に着目したのかというと、オオサンショウウオがどんな餌が好きかということが分かれば、栄養摂取の向上によって成育や生存率が改善できるのでは?と考えたからです。また野生のオオサンショウウオの調査では、餌を入れたトラップを仕掛けてオオサンショウウオを捕獲することがあります。好きな餌が分かれば、捕まえやすくなって調査にも役立つかも?と思ったので餌の嗜好に着目しました。

調査は広島市安佐動物公園 オオサンショウウオ保護増殖施設でさせていただきました。実験にはアジ、ホッケ、エビ、イカの4種類の餌を使用して2種類ずつ総当たりで比較しました。オオサンショウウオは川に生息しているのになんで海産の餌?と思われるかもしれませんが、調査に活用したい!という思いもあったので、高価な餌だったり入手しにくい餌だと調査に使いにくいですよね。だから入手しやすくて比較的安価な餌を使用しました。また、餌の形を変えてもオオサンショウウオの好みが変化するかも?と思ったので、アジの切身とアジのミンチでも比較しました。

実験にはこんな筒を使用しました。どうやって使うのかというと…

こんな感じでオオサンショウウオを入れて使用しました。

オオサンショウウオかわいいですね(^^)

そしてこの筒を水槽に沈め、餌を入れて待ちます。一定時間が経過したら筒を開放してオオサンショウウオがどちらの餌に食いつくかを観察・記録しました。

結果はアジに食いつく個体が多くなったので、アジを好きな個体が多いと言えそうです。ホッケも、好む個体が多いとまでは言えないものの、ホッケを好きな個体は多いのでは?と思える結果になりました。野生のオオサンショウウオはサワガニをよく食べているので、同じ甲殻類であるエビを好きな個体が多いのではないかと思っていましたが、予想とは違いました。実験回数を増やしたり、別の餌で実験してみたらまたおもしろい結果が出るんじゃないかなぁと思います。

・おまけ
観察中に水槽の溝に入って動かなくなってしまった個体がいました。隠れているつもりなのか全然動いてくれませんでした。狭いところが落ち着くんですかね…?しばらくこの状態のままだったのですが、その後…

ズルズルと落ちてこんな状態に。この状態でも全然動きませんでした(笑)これで隠れた気になっているんでしょうか…頭隠して尻隠さずとはまさにこのこと…(笑)

最後に、研究にご協力いただいた飼育員の田口さんをはじめとする安佐動物公園の皆様、小倉先生に感謝いたします。本当にありがとうございました。
(佐々木)