最近の研究室は卒論提出の締め切りに追われ、添削添削の日々となっています。
今回は4年生のレッサーパンダ班に研究を紹介してもらいます。
こんにちは。
動物行動学研究室の4年・中藪・村山です。
今回は、私たちレッサーパンダ班がどのような研究を行ってきたかを簡単に紹介していこうと思います。
私たちレッサーパンダ班はレッサーパンダの常同行動に影響を与える要因は何か?ということをテーマに研究を行いました。
今回研究のテーマにもなっている常同行動とは、どんなものなのかよく分からない人も多いかと思います。
具体例としては、動物園動物のクマやトラが檻の中を行ったり来たり繰り返し歩くなどの、一見目的をもたず、繰り返し反復して行う行動があげられます。
異常行動の一つで、長期の葛藤やストレス状態で出現するとも言われていますが、根底にある原因については、まだよく分かっていません。
また、近年多くの動物園では、動物福祉に配慮し、環境エンリッチメントの取り組みや、飼育環境の工夫などが充実してきていますが、常同行動は依然として多くの動物園で見られています。
このことから、常同行動の引き起こされる原因って一体何だろう?ということで研究を行いました。
また、今回研究で用いたレッサーパンダは食肉目に分類されていますが、その食性はササ類を主食とする草食性に近い生態をもつことから、常同行動の発現パターンを調べ、常同行動の発現メカニズムが、分類的なものか、生態的なものに由来して引き起こされるのかということについても研究を行いました。
今回研究調査で協力していただいた動物園は、長野市茶臼山動物園、江戸川区自然動物園、よこはま動物園ズーラシア、多摩動物公園の4園です。
これらの動物園で、計19個体のレッサーパンダに協力してもらいました。
今回、実験は、①構造物の追加、②給餌方法の変更の2つの操作を行い、操作前と操作後で比較して、常同行動に変化が見られるかどうかを調べました。
構造物は、各園の動物園の展示場に合わせてどんなものを追加するか自分たちで考え、動物園の方にも協力してもらい設置しました。
タケのスロープを作っている風景です。
だんだん完成してきました。
こうして作った構造物を、実際に展示場に新しく追加しました。
麻袋で作ったハンモックを追加してみると・・・
早速使ってくれました。
その他にも、タケと木材で作った置台
消防ホースで作ったハシゴなどを追加しました。
若干登りにくそうですが、一段先にあるりんご目指して頑張ってハシゴを登ってくれています。
給餌方法の変更では、従来あげている枝付きのタケを、粉砕したタケ粉に変えてレッサーパンダに与えることで、常同行動に何か影響を及ぼすのか?ということを見ました。
↑従来与えていた枝付きのタケを・・・
タケの葉をむしり、はさみで葉を切り刻み、
ミキサーにかけて、
このような粉末状のタケ粉にして、与えました。
これらの実験を行い、操作前と操作後で比較して、レッサーパンダの常同行動に何か影響を与えるのかということを確かめるために、行動観察を行いました。
そして、得られた4園での行動観察のデータ解析を行いました。
その結果、解析した12個体のうち、9個体では、操作前と操作後で比較して、常同行動の出現回数に差が見られませんでした。
このことから、今回実験した構造物の追加や、給餌方法の変更は、あまり影響はなかったようですね~。
また、飼育下動物の、常同行動の出現は、毎日決められた時間帯に行われる給餌や、収容、イベントなどの事柄に影響してくることが分かりました。
レッサーパンダの行動観察より、食肉目に多くみられる行ったり来たりを繰り返す往復歩行を多く行う個体が、観察した個体の8割以上でみられました。
このことから、レッサーパンダの常同行動は、種の分類的・系統的なものに由来して引き起こされる可能性が示されました。
食性は常同行動の発現パターンにあまり影響しないようですね。
今回の研究で、常同行動へ影響を与える要因は1つではなく、さまざまなことが複合的に影響しあっていることが分かりました。
4園での研究調査ということで、体力的にも少しハードな研究ではありましたが、
レッサーパンダの可愛い一面も見られ、終始癒されました。^^
終わりに、動物園動物に限らず、産業動物や、愛玩動物など、私たち人間の飼育下にある動物たちの幸せとは一体何でしょうか?
常同行動の要因の探索は、今後もまだまだ行っていく必要があります。
動物園動物にとって幸せな暮らしを、少しでも実現していければと思います。
今回協力していただいた長野市茶臼山動物園、江戸川区自然動物園、よこはま動物園ズーラシア、多摩動物公園の皆さま、ありがとうございました。
(中藪・村山)