今年度の研究紹介、第4弾です。
今回は盛岡市動物公園で実験をおこなった二人に紹介してもらいます。
こんにちは。盛岡班の澤と鹿野です。
私達は昨年に引き続き、盛岡市動物公園にて環境エンリッチメントの研究をしています。
環境エンリッチメントとは、飼育下におかれる動物の常同行動等の異常行動を減らすことや、動物本来の行動を引き出す工夫のことをいいます。
対象動物はフクロウ・シロフクロウ・イヌワシの猛禽類3種としました。
また環境エンリッチメントは5種類ありますがその中で感覚エンリッチメント、さらにその中の聴覚エンリッチメントに焦点をあてることにしました。
なぜ猛禽類で聴覚エンリッチメントなのか?という点について説明していこうと思います。
鳥類の中でも猛禽類、特にフクロウ類は聴覚が特に優れていることが知られています。
その聴覚を頼りに暗闇の中でも正確に獲物を捕らえることができ、特性を活かすという意味で聴覚エンリッチメントが有効であると考えました。
また猛禽類でも種によって生活リズムが異なります。
盛岡市動物公園では夜行性のフクロウ、夜行性ですが昼間でもよく活動するシロフクロウ、そして昼行性の代表的な猛禽類としてイヌワシが飼育されています。
この3種で比較をおこない、生活リズムと聴覚エンリッチメントの関係性、そして音声の種類で効果に違いがあるのかを調べることを目的にしました。
実験は10月中旬から11月中旬と約1か月で行いました。
用いた刺激はクラシック音楽、捕食動物のネズミの鳴き声や足音、他個体の鳴き声とし、これらの条件はランダムで試行しました。
音声を呈示するスピーカーは各2か所に設置に設置しました。
例にフクロウ舎を挙げて説明すると、赤丸の位置にスピーカーを設置しています。
見えにくいですが、バックヤード側に1つ
説明板の裏に1つ置いています。
刺激が音声なので、わかりやすく刺激に反応している動物の写真がありませんが、実験中の動物の様子です。
フクロウ
シロフクロウ
イヌワシ(出羽と空)
実験結果を今まとめている最中で、明確な結果を出すことができないのですが、同じ条件でも種や個体によって増加・減少する行動が異なるということがいえます。
例えば、クラシック音楽では静止においてイヌワシ出羽のみ増加し、その他の個体では減少しています。
また、他個体の鳴き声ではイヌワシ両個体で社会的行動(他個体のそばに移動する等の行動)が増加するといった結果が見られました。
これから結果の解析を進め、どの条件が効果的なのか、また生活リズムによって効果に変化があるのかをみていきたいと考えています。
おまけ↓
盛岡市動物公園は坂が多く、機材の運搬が少し大変でした…
雨の日も観察をおこないました。
1日2時間のとても短い時間でしたが、雨の日や風が強かった日は過酷でした(笑)
調査中に研究室のメンバーが応援しに来てくれました!
わんこそばに挑戦したメンバーもおり、良い思い出になりました。
1か月という長い調査でしたが、盛岡市動物公園の皆さまやたくさんの方々の協力があってこそできた研究だと思います。
本当にありがとうございました。
(澤・鹿野)
私は動物の意思疎通方法について興味があり、特に鳥の音声コミュニケーションについて研究したいと思っています。聴覚エンリッチメントだけでなくコミュニケーションについても研究できますか。